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好きなお酒

居酒屋だったらコークハイかモスコミュール。

 日本酒は鍋島や七田。

 

自分の好きなお酒って気付かないうちに固定化されていくものだなあと思いました。

 

基本は外飲みが多く、新しいお酒にチャレンジする機会は多い方なのですが…。

 

直近で新しいお酒にチャレンジしたのはいつだったか。

 

懐かしい思い出の中に埋もれて、忘れちゃってますね。

衝撃だったマティーニ

自分はマティーニというお酒がとても苦手でした。

 

大学生の時に背伸びして近所のBARに通っていたのですが、

そこで初めてマティーニを飲みました。

 

きっかけは語感がカッコイイという理由だけで頼んだという不純なものでです。

 

以後、未知のお酒には他にも挑戦した経験はあるのですが、

当時のマティーニほど衝撃を受けたのはありませんでした。

 

見た目はとてもシンプルです。

薄い黄緑色のお酒の中にオリーブが一つ、お洒落に沈んでいます。

 

内心格好つけながらクッと口の中へ。

 

あの味は形容しがたいものだった、ただそれだけ記憶しています。

 

今、言葉や文字で説明することはできませんが、

とにかく物凄く不味かった、という事だけが鮮明に記憶されていました。

自分が好きなお酒を探してみる

マティーニは美味しくなかったけど、他のカクテルは好きでした。

 

背伸びはするけど、分からないことを分かったふりだけはしないようにしよう。

 

それだけをモットーに学生時代はお酒を飲み続けてみました。

 

XYZ、ホワイトレディ、カミカゼ、ギムレット、ダイキリ、バカルディ等々。

 

色んな好きなお酒ができました。

 

それでも、マティーニだけはずっと飲まないように避けてました。

ちょっとしたトラウマだったんでしょう。

思い込んでいた5年間

マティーニを避けてお酒を飲み続けること5年。

 

その5年の間に自分は大学を卒業して大学院に進学して、

修士論文を完成させました。

 

状況は目まぐるしく変化していきます。

 

でも、お酒ではずっとマティーニを拒否していました。

メニューに載っていても、次のページをめくる。

 

その日、大学の近くにあるBARに行っても、

マティーニなんて注文するつもりもなく、いつも通り好きなお酒を飲んでいました。

 

どんな話でマティーニが出たのか、今でも記憶にはありません。

でも、バーテンダーさんとお酒の話をしてふとマティーニの話に及んだのだと思います。

 

「自分、マティーニが苦手で、もうずっと飲んでないんですよね。」

 

その一言でマティーニの話は終わっていたのですが、そのバーテンダーさんは違いました。

味は変わりますよ?

「味覚は慣れたりして変わるものですよ。今まで色々カクテルを飲まれてきて、ハーブとかリキュールとか味に慣れてると思います。」

 

グラスを拭きながら、バーテンダーさんは言いました。

 

「美味しくなかったら残してもいいですよ。マティーニ。飲みませんか?」

 

選択肢が全くないところに、突如ピョコンと選択肢が現れて。

呆気にとられたような、キョトンとするような、そんな感覚がありました。

 

飲めるのかなあと不安になりつつも、5年ぶりに1杯だけマティーニを注文しました。

 

少しして目の前に出てきたカクテルは、あの時と同じように微かに薄い黄緑で、底にオリーブが一つ沈んでいました。

 

意を決してクッと一口。

 

ピョコンと現れた選択肢。

 

一口飲んですぐに消えるだろうと思っていました。

 

けれどもずっと、消えずに残ったのです。

マティーニが教えたこと

一番好きなお酒にはなりませんでした。

トラウマはそれほどまでに強烈だったのでしょう。

 

でも、そのお店で頼んだマティーニは美味しく最後まで飲みました。

 

5年間のどこで変化したのかは分かりません。

 

しかし、最初の印象で固定化して、

「マティーニが嫌いな自分」のイメージを自分の中で作り上げていたのは確かです。

 

これはお酒だけの話ではないように思います。

 

自分の中で「自分のイメージ」を勝手に作っている、こんな事がどれほどあるのでしょうか。

 

人は安定を好むので、常に挑戦するというのは不可能だと思います。

しかし、もしかしたら作り上げたイメージなのかもしれない、そう思って生きていきたいですね。