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「ファクトチェック」という違和感

きちんと事実に基づいて情報を判断しましょう。

 

インターネットの普及に伴い、情報過多の時代に突入して久しくなりますが、

最近、情報を精査していくチェック機能として「ファクトチェック」という概念?取り組み?を耳にします。

 

今回は「ファクトチェック」とは何かという事と、「ファクトチェック」に対する自分の考えについて書いていきます。

ファクトチェックとは何ぞや?

「ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して、正確な情報を人々と共有する営みです。」

ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)「ファクトチェックとは」より抜粋。

 

ファクトチェックを推進する団体のホームページを確認すると、上記の通り説明されていました。

 

要は発信されている情報が、事実に基づいているかどうか調べて、正確な情報を人々と共有する仕組みのことです。

なぜファクトチェックが重要なのか?

この問いに対する回答は明らかです。

 

SNSの普及に伴い、精査されていない誤情報や、意図的に情報操作されたデマなどを広めないためです。

 

色々と意見がありそうとも言い切れませんが、

 

情報の発信源がテレビや新聞などに限られた時代では、メディアがチェックして報道するという形になっていました。

 

しかし、個人がブログやSNSで情報を発信する時代になると、事実かどうか精査されていない情報が、メディア以上に影響力を持つようになってきました。

 

ファクトチェックは、第三者がその様な情報をチェックすることで、情報の質を保証する取り組みにもなっています。

どの情報に注目するか?

ここからは、私個人の感想です。

 

個人的にファクトチェックの取り組みは、一つの重要な問いを社会に投げかけているという点で、重視されて然るべきと思っています。

 

一方で、ファクトチェックによるデメリットも考える必要があります。

 

デメリットを考える際に、ファクトチェックのルールを紹介してみます。

 

① 対象言説の特定・選択:対象となる言説を特定し選択する

② 事実や証拠(エビデンス)の調査・明示:取材と調査をして第三者に証拠を明示する

③ 対象言説の真偽・正確性についての判定:ミスリードや誤りをジャッジする

 

個人的に課題が残るのは、①の特定と選択、②の取材と調査です。

 

①特定と選択の課題

特定して選択するということは、重要かそうでないか選別するという事になります。

 

特定の人にとっては重要でない情報でも、他の人から見ると重要になるかもしれません。

 

問題の言説は「どれなのか」と絞り込むこと自体もある種の情報操作になり得るのです。

 

②取材と調査の課題

取材や調査自体も、課題があります。

 

取材の場合、誰に取材をするのか。

調査もどの情報に当たるのか。

 

これはチェック側の判断に委ねられます。

 

ファクトチェックには、根拠やプロセスも開示するというルールはあるので、かなりの客観性をもって進めていることが容易に想像できます。

 

しかし、それでも全取材対象者・全情報を開示するのは不可能です。

 

取捨選択された証拠や情報をチェックできるのは決して無意味ではありませんが、バイアスが入る余地は残されています。

自分自身で判断を!

第三者が「事実」と認定したものを鵜呑みにする危うさ。

 

自分がファクトチェックに感じる違和感はこの一言につきます。

 

おそらく、相当な労力や工数をかけていると思われるので、

信頼性は高いと思いますが、それだからと言って過信するのは厳禁です。

 

大事なのは、自分自身が情報に触れ、調べ考えることです。

 

もしかすると、大事なのは事実よりも主観なのかもしれません。

自分がその情報をどう受け取るのか、どう処理するのか、時代が私たちに問いかけています。

 

最後に歴史学者であるE.H.カーの言葉を紹介して終わります。

 

「歴史とは『疑わしい事実という果肉で包まれた解釈という堅い芯』である、と言いたいところです。」

E.H.カー「『歴史とは何か』歴史家と事実」より抜粋